Monk's Music (Thelonious Monk)

Monk's Music(Thelonious Monk)

今回はジャズです。セロニアス・モンクという一風変わったピアニストのアルバムを紹介します。


モンクのどこがどう変わっているかは、その演奏を聴けば分かります。「何だこれは!?」と思いますよ、絶対。ま、聴いてみてください。百聞は一聴にしかず、です。

でもちょっとだけ説明すると、音の組み合わせが奇妙なのと、リズム感が独特なので、聴くと一瞬違和感を覚えるわけです。そのせいで、昔は「へたくそ」なんて言われていたみたいです。1940年代の初頭からずっと不遇の時代を過ごし、やっと、1950年代の後半になって、評価されるようになったくらいですから。モンクに時代が追いついた、という感じですが。

もちろん、誰にでも違和感を覚えさせる演奏をすることはできます。適当に弾けばいいんです。私にもできます。でもそれは、素晴らしい音楽でない以前に、音楽ではない。対して、モンクの場合はそういうスタイルなのです。一風変わってはいますが、それは素晴らしい音楽のひとつのカタチなのです。だから、モンクばかり聴いていると、普通の曲の方に違和感を覚えます。モンク的世界。それは、入りにくいみたいですが、入ってしまうと、これほど快適なところはない。


モンクのスタイルを知ろうと思ったら、ソロ・アルバムを聴くのがベストです。"Thelonious Himself"というアルバムがあるんですが、これは凄い。徹頭徹尾モンクです。しかし、私にとってはあまりにヘヴィーです。おすすめとしては、リヴァーサイド時代からSONY/CBS時代のものがいいと思います。親しみやすく聴きやすい。それに、モンク以外のプレイヤーの演奏が聴きものなのです。それは、モンク的世界に引きずり込まれそうになりながらも、自分のプレイをしようとするからでしょうね、たぶん。


実は私の最も好きなジャズ・ミュージシャンがモンクです。もちろん、ビル・エヴァンズもいいですし、マイルズ・デイヴィスも素晴らしいミュージシャンですが、モンクが一番体にしっくり来ます。モンクの音楽は私の心の琴線に触れるどころか、爪弾くんです。聴いた瞬間に惹かれました。

もちろん、前述のように音楽として素晴らしく、一番しっくり来るから好きなわけですが、そこには、一種の憧れみたいなものもあると思います。モンクみたいに生きるのは大変そうだけど、恰好いいなぁ、という憧れです。


彼の音楽を聴くたびに、これはジャズではないんじゃないか、と思います。聴き込むほどにそういう感が強くなります。クラシックでも、ポップスでもないし、カントリーでもないし、どう考えてもイージー・リスニングでもない。ただアド・リヴがあるというだけでジャズに分類されているだけじゃないか、と思うのです。正確に言うならばモンクの音楽はジャズじゃなくて、"Monk's Music"なんだ、と思います。

私にとってのアイドルみたいなものですね、モンクは。